ブドウ農家さんのこだわり
私たちの家族には、誰もが知る「灯台下暗し」の教訓が刻まれています。幼い頃、私たち兄弟は母の背中を見て育ちました。父を失い、女手ひとつで家族を支える母は、厳しい農業の世界で一生懸命働いていました。子供心に感じた農業の厳しさ、そして母の苦労。私は当時、農家にはなりたくないと心に決めていました。
しかし、月日が経ち、地域の田畑が荒れ果て、高齢化と担い手不足が進む中で、私たちは見過ごすことができませんでした。「この地を、私たちの手で再生できるのではないか?」そう思い立ったのは、母が背負った重荷を、私たち夫婦の力で軽くできるかもしれないという浅はかな思いからでした。
農業の道を歩み始めてから、私たちの挑戦はまだ始まったばかりです。経験も浅く、試行錯誤の日々が続いていますが、だからこそ、先輩方の知恵を素直に受け入れ、諦めずに一歩ずつ進むことができるのだと信じています。農業は自然と共に生きる仕事。季節や天候に左右されることもありますが、それを言い訳にすることなく、理想に向かって努力を積み重ねています。
「使わなくていいものは使わない。」これは、私たちが目指す葡萄栽培の基本理念です。化学肥料や農薬に頼らない、シンプルでありながら挑戦的な農業。それは簡単な道ではありませんが、安全で安心な葡萄を皆さまにお届けするため、日々学び続けています。
そして私たちが願うのは、この葡萄が「大切な人のその先の大切な人へ贈られる葡萄」であること。私たちの手から生まれるこの葡萄が、愛や幸せを繋ぐ贈り物となり、次の世代へと受け継がれていくことを心から望んでいます。